『花とアリス』以来、およそ8年ぶりに発表された岩井俊二監督による待望の長編ドラマです。
本作品は、岩井俊二が監督・撮影監督・原作・脚本・音楽・編集・プロデュース・デザイン・ストーリーボードの一人九役を務めたことでも話題となりました。
外国が舞台の映画ですので海外キャストがほとんどの中、日本からは岩井監督作品には欠かせない女優の蒼井優が参加しています。
ストーリーが生まれたのは、かれこれ１０年前も前になるそう。
古典的な存在であるヴァンパイアの話と、自殺サイトに集う少年少女と殺人犯のストーリーが合体し、この『ヴァンパイア』が完結したとのことです。
いわゆるありきたりの吸血鬼ものではなく、あくまでここでの『ヴァンパイア』は比喩。
ヴァンパイアムービーとは一線を画した、儚い詩的な物語となっています。
岩井監督らしい、日本人監督らしい、美しさと静けさが心を震わせる作品となっています。
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あらすじ
とある郊外で待ち合わせた“プルート”と “ジェリーフィッシュ”。
明らかな偽名で名乗りあった男と女は、自殺サイトで知り合い、この日一緒に自殺することを約束していた。
男の車で更に郊外へと向かう最中、自殺の方法について男が提案する。
「ひとついい方法が・・・血を抜くんだ」
痛みはなく、外傷もない。
美しく死ねると、男は説明する。
女はそれを了承し、二人は人気の無い倉庫へ辿り着いた。
「君が終わったら、僕も死ぬ」と言って、男は女を大きな冷凍庫の上に寝かせる。
そして、手際良く採血の針を両手足に刺していく。
針から伸びた長い管の先には瓶があり、女の体から抜けた血が次々と溜まっていく。
その後、男は息を切らせて倉庫から出てくるや否や、血の入った瓶を取り出し、興奮気味にその血を飲み始めた。
男の本名はサイモン。
アルツハイマーの母親を持つ高校の生物教師であり、そして“ヴァンパイア”でもあった。
キャスト
サイモン：ケヴィン・ゼガーズ
出典：https://www.cinematoday.jp/news/N0051874
高校の生物教師であり、この映画での『ヴァンパイア』。
アルツハイマーの母と二人暮らしをしているサイモンは、一見は真面目で物静かな人間である。
しかし、プライベートでは自殺サイトで自殺願望のある女性と出会い、血を抜きとって死に至らしめる殺人鬼。
自殺志願者の間では有名な存在であり、“ブラッドスティーラー”または“ヴァンパイア”と呼ばれ恐れられている。
ゼリーフィッシュケイシャ・キャッスル=ヒューズ
出典：http://vampire-web.com/jp/cast_staff.html
サイモンが自殺サイトで知り合った自殺志願者。
サイモンから血を抜いて死ぬという方法を提案され了承し、被害者の一人となる。
ミナ：蒼井優
出典：http://blog.livedoor.jp/y0780121/archives/50732013.html
サイモンの高校に通う留学生。
自殺を企んでおり、サイモンから説得を受けている。
レディバード：アデレイド・クレメンス
サイモンが自殺サイトで出会った自殺志願者の一人。
集団自殺に巻き込まれそうになったところを、サイモンと共に逃げ出した。
人柄の良い彼女に、サイモンは自分が『ヴァンパイア』であることを告白してしまう。
レンフィールド：トレヴァー・モーガン
サイモンがパーティーで出会う男。
『ヴァンパイア』の正体がサイモンであることを知っている人物。
ヘルガ：アマンダ・プラマー
サイモンの母で、アルツハイマーを患っている。
歩くことすらままならない為、サイモンが発案した介助器具を取り付けて生活している。
マリア・ルーカス：クリスティン・クルック
バレリーナを目指していた自殺志願者。
サイモンがいつものように自殺助長を促す。
ローラ・キング：レイチェル・リー・クック
サイモンの母が起こしたトラブルで世話になった警官の妹。
兄に紹介されたサイモンに対して好意を持ち、頻繁に実家に通い詰めて世話を焼いている。
制作スタッフ
岩井俊二：監督・脚本・撮影・編集・音楽・プロデュース
感想
出典：http://blog.livedoor.jp/y0780121/archives/50732013.html
タイトルを見る限りでは「流行りのヴァンパイア物？」と思ってしまいますが、これは完全に“岩井俊二作品”でした。
承諾を得ているとは言っても、サイモンの行っていることは決して許されることではありません。
しかし、その殺人には芸術のような美しさや神秘的な空気が流れており、そこにはサイモンの内にある苦悩や寂しさ、言葉では表しきれない何かが見えるように感じました。
出典：https://ham-ichi.at.webry.info/201305/article_4.html
蒼井優というキャスティングも、一人だけ日本人というところが妙にミステリアスな空気を出していて、合っていたと思います。
まるで血が通っていない人間のような、冷たく鼓動も聞こえない・・・そんな雰囲気でストーリーが進んでいくのですが、
サイモンの感情に合わせるかのように、ストーリーに血が通い始めて、徐々に暖かさを感じられるようになります。
この流れるようなこの動きが、とても美しい作品だと思いました。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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