斬新なビジュアルと映像美に頼りきることない完璧なストーリー展開が見どころの2000年公開のサイコ・スリラー。
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あらすじ
広大な砂漠。赤土色の大地。
純白のドレスに身をつつんだ一人の女性が、黒馬に乗り駆け抜けます。
あまりにも、非現実的な光景。
果たして、女性は気づいたかどうか。
女性が降りた瞬間、黒いアラビア馬は、ピタリと動きを止めただの置物に変わります。
砂丘を一人あるく女性。
ふと木々がまばらに生える、開けた場所に出ます。
「馬をありがとう」
女性は、木々の近くに一人佇む少年に声をかけます。
しばらく無言の二人。
「…海に行こうか」
そう言って近くに落ちている、おもちゃの船を拾い上げ、少年のほうを振り返ります。
「約束したでしょ?」
「お化けのモッキーロックがここにいろっていたんだ!」
そう拒絶する少年の顔は歪み、いつの間にか彼自身がお化けと化し、そのまま走り去ってしまいます。
後ろ姿を見送った女性は、一つため息をつき、左手の親指と人差し指の根元を右手の指で、ぎゅっと押さえます。
まるで痛みで、夢と現を確認するかのよう…。
次の瞬間、
砂漠や馬は消え去り、そこに現れたのは天井から眠るように吊り下げられた一人の女性と少年の姿。
舞台は現代アメリカ。キャンベル医療センター。
最新鋭の医療設備を備え、医師と患者の脳内精神世界を繋げることで、昏睡状態の患者に対する実験的治療を試みる、カウンセリングルーム。
小児精神科医のキャサリン・ディーンは、ため息をつきながら起き上がり、エドワードの精神世界から現実へと戻ってきたのでした。
この半年間というもの毎回のようにお化けのモッキーロックに邪魔され、エドワード昏睡状態は一向に回復が見られません。
キャサリンがエドワードの治療に従事している間、世間では若い女性を対象にした連続猟奇殺人事件が発生します。
被害者はみな溺死。新たに発見された遺体は、警察の目につかんばかりの場所に遺棄されていました。
事件の担当捜査官ピーター・ノヴァクはこれに疑問を覚え、犯人は心のどこかで逮捕されたがっていると考えます。そんな中、次なる女性が誘拐されてしまいます。
次なる誘拐に、事件本部に緊張が走る中、
直近の被害者の遺体からアルビノの犬の毛が付着していたとの検視報告が。
カール・スターガーが容疑者として浮かび上がり、ピーター達は容疑者宅へ急行します。
しかし、スターガーは逮捕直前に自宅で発作を起こし昏睡状態に陥ってしまいます。証拠品が押収され、被害者たちは自宅とは別の監禁場所で水槽に入れられ、約40時間後に自動給水システムにより溺死させられていたことが発覚します。
誘拐された女性のリミットは、わずかに40時間。
犯人は心のどこかで、罪を償いたがっている。
そう感じるピーターは昏睡状態のスターガーから、なんとかして監禁場所を聞きだそうとキャンベル医療センターをおとずれます。
精神と肉体は切り離すことができず、
猟奇殺人鬼が支配する猟奇殺人鬼の精神世界にアクセスすることはキャサリン自体をも命の危険にさらされます。
しかし、ピーター達から話を聞いたキャサリンは、被害女性救出を決意。
危険な猟奇殺人鬼の精神世界にアクセスすることを了承するのでした。
危険を承知で飛び込んだ猟奇殺人鬼の精神世界は、何もかにもが不気味。
早々に排除され(殺され)そうになったキャサリンですが、一人の少年に助けられます。
少年からいろいろ聞きだしたいキャサリン。
しかし、少年は何かにおびえ、逃げるように姿を消してしまします。
一方、この歪んだ世界に君臨する支配者スターガー。
己の世界に侵入してきたキャサリンをいち早く察知しつつも、
排除の失敗に気づいた彼は、キャサリンを己の精神に同化し取りこもうと画策しはじめます。
キャサリンは、命の危険を察知。
少年のことが気になりつつも、いのちからがら歪んだ精神世界を脱出します。
あまりの歪んだ世界観に恐怖を覚えたキャサリン。
一方で、おそらく幼少期のカール・スターガーであろう、あの少年が気になったこともあり、勇気を奮いお越し再びスターガーの精神世界にアクセスします。
しかし、結局悪魔のようなスターガーに見つかり捉えられ、精神世界に閉じ込められてしまいます。
キャサリンを救うべく、ピーターは残りの装置を使い、スターガーの精神世界へ。
なんとかキャサリンを見つけるものの彼女は自分が誰かも忘れており、無反応です。そのうちピーターもスターガーに捉えられ拷問にかけられます。
痛みに気を失いそうになる中、必至にキャサリンに話しかけるピーター。
辛い過去の話をあえて聞かせることで、彼女を正気に戻し、スターガーを退けます。
建物内を逃げる二人。
水槽の中にいるジュリアがいる部屋へと足を踏み入れます。
さらに再び現れた少年に監禁場所のヒントを得た二人は、すんでのところでスターガーの手を逃れ、現実世界へ戻ります。
しかし、代わりに少年が悪魔のスターガーにさらわれてしまいます。
「必ず、戻ってくると約束するから‥」
抵抗するキャサリンをピーターが現実へと連れ戻します。
監禁場所のヒントを得たピーターは、早速現場へと急行します。
一方、キャサリンは少年をすくべくシステム制御室に立てこもり、もう一度スターガーの精神にアクセス。
危険を承知で、自分の精神へとスターガーを招き入れることに。
少年には慈悲溢れる聖母の姿、少年を追ってきた悪魔のスターガーにはクロスボウを持ったいでたちで応戦しますが…。
キャスト
キャサリン・ディーン:ジェニファー・ロペス
最新鋭の医療設備を備える、キャンベルセンターに勤務する小児精神科医。特殊なシステムを使用し、被験者の脳内精神世界にアクセスし、患者の精神に直接働きかけることでカウンセリングを行う。半年の間、昏睡状態に陥っている患者エドワードとシステムを介し対話しつつも、昏睡状態を解けないでいる。
ピーター・ノヴァク:ヴィンス・ヴォーン
連続猟奇殺人事件の担当FBI捜査官。監禁中で40時間後に溺死させられる最後の被害者ジュリアを救うため、昏睡状態の容疑者スターガーから、監禁場所を聞きだそうと、キャンベルセンターを訪れる。
カール・スターガー:ヴィンセント・ドノフリオ
連続猟奇殺人事件の容疑者・犯人。分裂症の一種で進行の速い重度の疾患を抱え、逮捕直前に発作で倒れる。自動給水システムにより、被害者を40時間後に溺死させる監禁用水槽に最後の犠牲者ジュリアを残したまま、昏睡状態に陥る。
アルビノの犬バレンタインを飼っている。
カール・スターガー(少年):ジェイク・トーマス
少年の姿で描かるスターガーの穏やかな一面、良心。猟奇性の象徴である悪魔のいでたちのスターガーに覚えつつも、昏睡中のスターガーの精神世界に入りこんだ無防備なキャサリンを助ける。悪魔のスターガーと自分が表裏一体であると、どこかで気づき、悟っている。
見どころ
映像美溢れる映画です。
ターセム・シン監督のセンスあふれる幻想的なセットは、見るものを圧巻します。
明らかに不健康で歪んだ世界であるにも関わらす、スターガーの精神世界にすら一種言葉を失うほど引き込まれます。
しかし、猟奇殺人鬼の精神世界なので、どうしてもグロテスクなシーンも多いので、苦手な方は少々注意が必要かもしれません。
感想
美しい映像美で洗練された映画ながら、破綻のない堅実なプロットもかね備えたターセム・シン監督らしい独特の世界観。
残念なことに、映像美をうたう映画の多くは、見た目だけを追い求め、ストーリーがなくなっているものが多いのですが、本作は違います。
確かに、普段からミステリーやサスペンスを見なれていると、もうひとひねりと思う点もありますが、それを加味しても余りある満足感があります。
映像美をうたう映画に抵抗がある人にも一見の価値あり。おすすめです。
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